複業フリーランスのhillpointです。
ITエンジニアの転職情報では、SES契約/客先常駐は、残業、休日出勤の連発、ブラックの温床だという記事があります。
また、入社後、すぐ客先常駐させられ、自分の会社の人がいないとか、自分がどこの会社の人間か?解らなくなるなんて、体験談なんかもあったります。
長年、IT業界にいると、こんなのあるあるですが、といいつつも、多数のITエンジニアは、SES契約/客先常駐で働いているのも事実です。
SES契約/客先常駐の実態は?どうなのか?現役SEが解説します。
まぁ簡単に結論を言うと
メリットとデメリットがあります。
悪な部分もありますが、どんなエンジニアになりたいか?どんな仕事をしたいか?でその捉え方は大きく異なり、一概に悪だけではありません。
むしろ、自分の成長・スキルアップを計るのであれば、もってこいなシーンもあります。
専門用語について
アイコンがついている専門用語は、「知らないと恥ずかしいITエンジニアの用語集」ページに説明を記載しているので、専門用語の意味が解らない場合、リンクをタップして、説明を参照してください。
SES契約とは何か?ここをよく理解したほうが良い
現役エンジニアは、SES契約について、なんとなくご存知かと思いますが、現役エンジニアでも、SES契約のメリットを理解していない人もいるかと思いますので、飛ばさず読んでほしいです。
SES契約(システムエンジニアリング契約)とは?
SES契約とは、期間契約ともよばれ、期間を定めて、その期間内に業務を行うことにより、報酬を支払う形態の契約です。
例えば
といった感じです。
簡単に言うと、エンジニアを派遣するようなイメージですが、いわゆる派遣社員とは、以下の点で異なります。
・SES契約は、発注目的に対する業務の遂行となり、発注者に指揮命令権がありません。
(派遣契約はあります。)
・SES契約は、発注者は、契約者の勤怠を管理することができません。
(派遣契約は管理されます。)
なに言ってんだ?と思うと思います。
法律上の細かいことは、さておき、こう理解すると違いがスッと入ってきます。
・SES契約は、決められた期間の業務を委託しています。
よって、期間と業務によって、お金を払います。
決められた期間に、お願いした業務を遂行していただければ、文句ありません。
なので、指揮することはありません。
勤怠も管理しません。
・派遣契約は、人に来てもらってます。よって、時間でお金を払います。
時間で契約してますので、来てもらっている時間は、指示した仕事をしてもらいます。
時間でお金を払うので、勤怠は管理します。
法律上の細かいことは、私は専門ではないので、弁護士さんのHPなんかがわかりやすいです。
SES契約の対極である請負契約について
SES契約や派遣契約の対極にあるのは、請負契約です。
請負契約は、成果物に対して代金を支払う契約です。
システム開発であれば、お客さんがこんなシステムを作ってほしい。と発注したものに対し、納期まで、そのシステムを納めることにより代金をもらいます。
請負契約の場合、成果物さえできれば、どこで、誰が、いつ作ろうが、問題ありません。
指揮命令権や労務管理等もまったく関係ないものです。
例えば
受注者は、見積を提示し、発注されたら、Webサービスを作って、納める。
といった感じです。
これが本来の姿ではない?
全部これにすれば良いのではないか?
と思うでしょうが、請負契約にはこんな特徴があります。
・納期遅延に対しては、契約に基づき契約違反責任があります。
契約違反に対する措置は、契約書に記載します。
例えば、納期遅延の場合は、違約金を支払う等です。
損害賠償等の可能性もあります。
(SES契約にはありません。)
・品質不良に対しては、契約に基づき瑕疵担保責任があります。
瑕疵担保とは、一定期間において、品質不良(=バグや問題)を無償での改修する責任です。
品質不良を原因とした損害が発生した場合、損害賠償等の可能性もあります。
(SES契約にはありません。)
SES契約は、どんな仕事で使われているか?
模範的な回答はこれです。
・請負契約での契約が困難な場合。
研究開発や新技術開発といった完成するまでにどのぐらいの期間となるか?どのぐらいの工数が必要となるか?解らないケース。
技術面や要求仕様面において、不確定要素が多く、完成に至るまでのステップが解らないケース。
不確定要素が多く、見積りができません。。。といったわけです。
なお、システム開発現場におけるSES契約が利用される実態はこの2つです。
・とても大きな案件で、大きすぎて、巨額すぎて、請負契約では、契約できない。
システム全体だけでなく、システム内の1機能といった最小単位においても、規模が大きく、リスクがありすぎて、請負契約では受けれない。
大きな案件とは、数億円とか、数百名体制とかです。
1機能であっても、数千万の規模。
システム開発は、失敗すると、受注額がすっ飛ぶような赤字になることもあります。
大きな案件となると、中小企業では、失敗した時のリスクが大きすぎて、請負契約では契約できないのです。
なので、世の巨大SIerが請負契約で受注してきて、中小のソフトハウスへSES契約発注し、開発するわけです。
・案件は小さくとも、リスクが高すぎて、危ない場合。
納期確保、品質確保においてのリスクに加え、技術者の問題、技術要素の問題と様々なリスクがあります。
まったく経験の無い分野・領域や新しい技術の導入等、リスクを負えれば、高い利益があるかもしれませんが、リスクが高すぎて、手がでせない場合。
お金が絡むシステム、巨額の賠償が絡むシステムとか、障害を発生させてしまった場合のリスクが大きい場合も、請負契約では受注できない要因です。
長々と書きましたが、現状SES契約が使われている案件は、ある意味、弱者(中小企業、下請け企業)の社員たちを守るための契約であるといった側面があります。
次に客先常駐とは何か?
実は発注元は常駐してもらいたいわけではないんですよ。
SES契約とセットで語られる客先常駐ですが、まぁ字の通り、お客さんのところ(最終顧客や発注元)に常駐して作業するということです。
なぜ?SES契約は客先常駐となるか?
SES契約は、別に作業場所を制限するものではありません。
他場所、自社でもできるのであれば、作業しても問題ありません。
目的は、委託された業務を遂行することです。
客先常駐となる理由の模範解答としては
・お客さんや他のチームと密接にコミュニケーションを取りながら、作業する必要がある。
・設備やセキュリティの都合により、客先の事務所に行かなければ、利用できない・作業できない。
といったところです。
実情は、簡単に言うと、客先常駐して作業しないと、ちゃんとできないからです。
いわゆる客先は、来てくれなくて、できるのであれば、来てくれなくても問題ありません。
発注元の立場から言えば、来てくれないほうが楽です。
常駐となると、作業場所、机やPC等の確保、入室のためのカードキーの手配等、準備物が増えます。
加えて、作業者が増えると、情報セキュリティの問題やいろんな人対人の問題が増えます。
客先常駐の実態はこの2つです。
・技術的にも、ノウハウ的にも、不足していて、客先や経験者、ノウハウ保有者がいるところに来て、教えてもらいながらでないとできない。
・開発の進め方、技術力、アウトプットがちゃんと出せるか?不安があり、目の届くところで作業してもらわないと信用できない。
例として
「来月から3か月間、月額70万円で、新規Webサービスの開発作業を行う。」の場合
あなたが自社で、作業したとします。
仕様や技術に不明点があり、3ヵ月後に仕上がりませんでした。
SES契約だから、納期に責任はありません。だから問題ないでしょ?
と言って、納得するお客さんは、この世にはいません。
本当に作業していたのですか?
不明点は、問合せしたのですが?
回答してあるのに、できなかったのはなぜですか?
といったことになるでしょう。
契約上は問題ないですから、代金は支払らわれたとしても、二度と仕事が来ることはないでしょう。
くわえて、会社自体の信用を落とします。
こんな風にならないように、毎日、事務所に来て、作業してください。
少なくとも、やっていたということは照明となります。
不明点や質問があるなら、詳しい人がそばにいるから、いつでも聞いてください。
わかるまで、できるまで、説明します。
とこんな感じで、客先常駐も、ある意味、弱者(経験の浅い人、ノウハウの少ない人)を守るための施策であるといった側面があります。
SES契約・客先常駐のメリットとデメリット
これらのSES契約・客先常駐の特徴を踏まえ、メリットとデメリットをまとめます。
メリット
・SES契約・客先常駐は、リスクを低減できるので、大きな案件や難易度の高い案件への挑戦ができる。
少なくとも品質不良や納期遅延による損害賠償沙汰は無いので、会社としても、エンジニアとしても、リスクが高くて手が出せないというような仕事(例えばお金に関わるシステムや医療や保安に関するシステム)にも挑戦できます。
まったく経験がない技術、ノウハウの無い領域でも、SES契約であれば、勉強(技術調査や運用調査)も含めて、仕事となります。
まぁ経験が無い人が採用されるか?は別ですが・・・
・お客さんや高い技術力、ノウハウを持った人と同じ現場で仕事ができる。
案件規模、会社のレベルによりますが、自社で仕事をしているだけでは、出会うことができない人と出会い、ともに仕事をすることができます。
大きな体制を率いるプロジェクトマネージャーとか、大手企業の社員たち、いろんな技術のエンジニア(例えば、ネットワークエンジニアやインフラエンジニア)等、様々な人と同じ現場で仕事をすることができます。
このメリットは、とても大きく、例えば、あまり明るくない技術に不明点があった場合、詳しい人に直接質問できて、はたまた、直接教えてもらえるというのは、調査時間の節約に加えて、技術習得、ノウハウ習得の糧となります。
デメリット
・大きな案件になれば、なるほど、自分の担当領域は小さく、部品の一部、大勢の作業者のうちの1人といったことになります。
案件の中心ではない、自分のプロダクトでない、といったことから、やりがいや達成感を得られないといったデメリットもあります。
・お客さんのそばにいることから、問題あれば、身を挺しての対応をせざるを得ない、帰りにくい、休みにくいといったデメリットがあります。
うまく行っている時はいいですが、プロジェクト崩れや多数の品質不良なんかがでると、険悪な関係・雰囲気となることもあります。
お客さんが遅くまで対応してくれているのに、申し訳ないとか
責任は無いが納期確保のため、残業や休日出勤を依頼され、断れなかったということもあると思います。
SES契約・客先常駐は、こう使いましょう!
SES契約・客先常駐は、どんなエンジニアになりたいか?どんな仕事をしたいか?をよく考え、自分がなりたいエンジニアになるために、うまく活用しましょう。
SES契約・客先常駐の活用方法、紹介します。
最先端の技術を持ちたい、研究者になりたい、技術を極めたい!
このような人は、大手企業にある研究所とかに就職できるのが一番ですが・・・
そもそも研究所というのは、学歴、専攻科目等との関係もありますし、簡単には就職できるところではありません。
私のような中途半端な学歴では、求人すら見掛けたことがありません。
SES契約・客先常駐を活用して、研究所なり、最先端技術を開発してる企業に入り込み、第一認者になることも夢ではありません。
その経験を生かして、自社なり、転職するなりし、研究職への展開も狙えると思います。
大きな仕事がしたい、大多数の体制を動かしたい、王様になりたい!
大企業、大手SIerの案件にSES契約・客先常駐で参入しましょう。
始めは石ころかもしれませんが、成長し、やがて、リーダとなり、自分のチームをもち、そのチームを少しずつでも、大きくしていきます。
まったく無名の会社出身でも、実力次第では、数十名体制のリーダーになるなんて例は、山ほどあります。
また、そんなところで満足してはいけません。
その経験は、自社で大きく評価されるでしょうし、スカウト・転職等、大きな糧となります。
高みを目指す土台としてSES契約・客先常駐を活用しましょう。
小規模でもいいから要件定義から運用まで、全部やりたい。いつか自分でサービス立ち上げたい。
中・小規模の案件にSES契約・客先常駐で参入します。
経験の無い分野、領域であってもです。
規模が小さな案件は、数ヵ月程度で終了していくので、数をこなすことで、要件定義から運用まで全部できるようになります。
仕事上で得た技術、ノウハウは返す必要がありません。
案件が終われば終わり、次の案件へ。
技術とノウハウは、担当者の頭と手だけに残る。
いろんな案件、分野、領域を経験することで、要件定義から運用まで全部できるようになります。
できるようになってから、自分のやりたい仕事、領域、サービスに挑戦してみる!
以上 「SES・客先常駐は本当に悪か?(結論)メリットとデメリットがあります。」
管理人:
駆け出しのころは、自社で、上司や先輩たちの雑用するぐらいなら、お客さんのところへ、常駐し、技術と顔を売ってくるというのも、アクティブ派には、良い選択かと思います。
SES・客先常駐の反対に、自社開発や社内SEもあります、これらもメリット・デメリットがあります。
社内SEになりたい?「客先常駐」で苦労したならいいとは思いますが、注意が必要ですよ。
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やっぱり、どんなエンジニアになりたいか?どんな仕事をしたいか?によります。
ちなみに、私は、「小規模でもいいから要件定義から運用まで、全部やりたい。いつか自分でサービス立ち上げたい。」派であり、それもあってフリーランスをしていますが、私の技術や仕事のやり方の大半は、SES契約・客先常駐で得たものです。
今でも、大手SIerに常駐してた時に指導してくれた人の言葉は自分の糧になっています。
厳しかったけどねぇ・・・
やっぱ、大手は厳しいよぉ〜。